大判例

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東京地方裁判所 昭和34年(ワ)3613号 判決

被告小松が昭和三十二年九月二十九日当時本件建物の所有者であつた訴外白井はるの代理人白井弘より右建物中別紙(一)の部分を賃料一カ月金一万八千円、期間同年十月一日より五年間の約で賃借したことは当事者間に争がないが、右の賃貸借は訴外帝国地方行政学会の抵当権設定登記後になされたものである上、期間が五年であるから、民法第三九五条本文による保護を受けられず、抵当権者たる訴外学会に対し右賃借権を対抗できない。そして右抵当権実行により本件建物を競落した原告は抵当権と同順位で、従つて被告小松の賃借権に優先して本件建物所有権を取得するから、被告小松は前記賃借権を以て原告に対抗し得ない筋合である。なお、五カ年間の賃貸借は民法第六〇二条所定の三年の期間の限度では抵当権者に対抗できると解すべきではなく、全然抵当権者に対抗し得ないものと考えるから、この点に関する被告小松の抗弁は採用できない。

なお原告の本件請求は、民法第三九五条による解除を原因とするものでなく、右法条による解除がなされなくとも抵当権に対抗し得ぬ賃借権はその実行による競落人にも対抗できぬことは前述のとおりであるから、この点に関する被告小松の抗弁も理由がない。

次に被告鈴木の抗弁について調べて見るのに、被告鈴木が昭和三十二年二月十四日、当時本件建物の所有者であつた訴外白井はるの代理人白井弘より別紙目録(二)の部分を賃料一カ月金五千円期間二年の約で賃借したことは原告の認めるところである。

従つて右の賃借権は訴外学会の本件抵当権設定登記より遅れてなされたものであるが、民法第三九五条本文により右抵当権に対抗し得るものであるところ、被告鈴木は二年の期間満了の際借家法の規定により賃貸借が更新されたと主張するが、証拠によると、訴外学会の抵当権実行申立により東京地方裁判所は昭和三十三年八月五日競売開始決定をなし、右決定は同月十二日登記されたから、これにより本件建物につき差押の効力が生じ、建物所有者は抵当権を害する一切の処分行為をなし得ないから、その後は民法第三九五条本文所定の家屋の短期賃貸借には更新の規定は凡て適用ないものと解するのが相当である。よつて被告鈴木の賃借権が更新されたとする同被告の抗弁は採用できない。

以上の次第であるから、原告の被告小松に対する本件建物の明渡請求及び昭和三十四年三月十日以降右明渡済に至るまで一カ月金一万八千円の割合による金員の支払を求める請求、並びに被告鈴木に対する本件建物の明渡請求及び昭和三十四年三月十四日以降右明渡済に至るまで一カ月金五千円の割合による金員の支払を求める請求は、何れも理由がある。

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